第5章 第22話 なっちゃん年表の付録です


−子どもの中に答えがある−

これまで子どもと共に取り組みをして思ったことです。

どうしたらいいか? 迷ったとき

これまでの子どもの経過をよく思い出して、

そして、現在の子どもの状態と、子どもの心の中をじっくり見つめることからはじめたら・・・と思います。



この3年余り、「どうしたらいいですか?」というメール相談をよくいただきましたが、

その子の持っているものや背景が全くわからないので、

アドバイスをすることは非常にむずかしいです。

どうか保護者の方は、お子さんのこれまでの経過と現在の状態を記録して下さい。

これは本当に役に立ちます。今と未来を助けるものになります。

私も『はは年表(詳しくはこちら)』を医師から一番わかりやすいと言っていただきました。



今回のお話の中で、なっちゃんのおかあさんは

「わたし 大切なことを いつのまにか 忘れてしまっている・・・」と気づきます。

なっちゃんのおかあさんにとって「大切なこと」は何だったのでしょうか?

みなさんにも考えて欲しくて、あえて書きませんでした。

このお話のプロローグに、おかあさんが絵本を読んできかせるシーンがあります。

この頃のおかあさんは、外国の絵本を必死に日本語に訳して、

なっちゃんのために毎日たくさん勉強していました。

そして「おかあさんと少しずつがんばっていこうね」とベッドの中でなっちゃんにやさしく言っています。

最初の頃の気持ちを忘れていることに、おかあさんは気づいたのかもしれません。


それとも、なっちゃんにできることが増える度に、おかあさんはとても喜んできて、

そしてだんだんできることよりもできないことに、目が向いてしまったのかもしれません。

そのため、まだきていない未来に不安を持ってしまいました。

そんな自分に、おかあさんは気づいたのかもしれませんね。



親はどうしても欲張りになってしまいがちです。

少しずつ初心を忘れてしまいます。

ひとつできると次も期待してしまう。くりかえし、くりかえしが大切なのに。

そして後退すると、とてもがっかりします。

後退した時の子どもの心の中を見る余裕もないくらいに、親も落ち込んでしまいます。

でも一番辛いのは、子ども自身です。

私の息子は1年かけて話せるようになったのに、2年生で大きく後退したんですね。

2年生でクラス替え、担任の先生が替わったことが大きかったようです。

息子はその時のことを、あとで作文にこう書いています。

でも二年生になったらまたしらないこがいっぱいいました。

ぼくは、三年、四年、五年、六年、ぜんぶしらない子がいたら

中学生になってとてもつらいかなあと思いました。


以下は、私が昨年下関市の講演会で保護者としてお話しした内容の一部です。
(Knet会員掲示板では、全文載せています。)

ここで、本日来られている保護者の方にお願いなのですが、

環境が変わることによって、一時的に症状が後退してしまうこともあります。

取り組みは長期戦で一進一退を繰り返します。

このように後退した時に、一番つらいのは、一番苦しいのは「親」ではなく、

「子ども本人」であるということを、忘れないでほしいと思います。

ですから子どもの前でがっかりした様子を決して見せないこと。

そして後退した状態のお子さんのありのままを受け止めてください。

後退しているときは、本人も落ち込み、そして学校で絶えず緊張状態が続いていますので、

家庭では安らげるようにしてあげてください




私がこの『なっちゃんといっしょに』で一番伝えたかったこと−。

それは、どんな時でも、ありのままのなっちゃんといっしょに歩いていくということ。

中心はなっちゃんです。

子どもが何を感じているか、理解していっしょに歩いていってほしい。

これができるのは、どんなにすぐれた専門家でもかなわない、

子どものおかあさんだと、私は思っています。


なっちゃんには、おかあさんがいつもいっしょにいました。

そして、お話の中には描いていませんが、

おかあさんにも、おかあさんといっしょに歩いてくれる人(伴走者)がいました。

どうかひとりでがんばらずに、いっしょに歩いてくれる人と共に歩き続けて下さい。

あきらめなければ、歩き続ければ、きっとそこへたどり着きます。


前にも書きましたが、なっちゃんは実在の人物です。

私が小学生の頃の友達でした。

次回最終回は、その実在のなっちゃんが、その後どんな人生を送ってきたか

画像にしてお届けします。

 
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                                           2010年2月1日  はは


次回は 第23話 最終回 「なっちゃんの未来」 

 そして 最終章 「エピローグ」    

2話続けて3月更新予定です。 



                                             

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